再生可能エネルギーへの注目が高まる中、太陽光発電は環境にも良くて収益も得られる投資として、個人・法人を問わず関心を集めています。
特に安定したインフラ資産としての位置づけから、資産形成の一環として導入を検討する人が増えています。
一方で、「思ったより儲からなかった」「業者とのトラブルがあった」「シミュレーションと違った」といった不安や後悔の声も聞かれます。
制度変更や天候リスクなど、不確実性がある投資であることは事実であり、事前にリアルな情報に触れておくことが非常に重要です。
そこでここでは、実際に太陽光発電投資を行った方の体験談や、発電量・売電収入のシミュレーションをもとに、現実的な収支の実例と成功のポイントを解説します。
これから始める方が不安を減らし、冷静に判断できる材料としてご活用ください。
【体験談①】YouTube動画「太陽光発電投資のリアルな収支事情」から学ぶ
ここでは、不動産Gメン滝島さんのYouTubeチャンネルにて公開された動画、
「年収600万円公務員が太陽光発電投資も設備ボロボロ…『リアルな収支事情』とは?」をもとに、太陽光発電所を購入した個人投資家の失敗談とリアルな経緯を紹介します。
購入からわずか4か月で売却に至った理由や、現地確認を怠ったことで起きたトラブルなど、これから太陽光発電投資を検討する人にとって貴重な教訓が詰まった内容です。
以下では、その体験談を4つの観点から整理して紹介します。
①設置場所や規模、初期費用の概要
投資家が購入したのは、愛媛県の離島にある中古太陽光発電施設です。
設置年は2018年3月、FIT単価は税込35.2円/kWhで、残存期間は13年6か月ほど。
購入価格は2,400万円で、そのうち土地代が320万円、残りが設備費用でした。
販売はネット経由で見つけた業者から。
残念ながら、現地を見ずに契約を進めたことが、後々大きな問題につながることになります。
②年間売電収入と実際の収支
売却前の4か月間で得られた売電収入は、約90〜100万円。
単純計算で月20〜25万円、年間換算で300万円程度の収入が期待される物件でした。
表面的には12%超の利回りで、「数字だけ見れば良い物件」だったと言えます。
ただし、地盤や機器状態、アクセス性など収支以外の部分が収益性に大きな影響を与えることが、後に明らかになっていきます。
③メンテナンスの手間やトラブル事例
まず大きな問題は地盤の脆弱さでした。
前面に池があり、水が施設側に流れ込んで土壌が流出し、地盤が不安定になっていたとのこと。
さらに、現地には大量の産廃物(廃棄物)が放置されており、処理費用も発生する状態でした。
また、設置されていたパワーコンディショナーは台湾製のリコール対象品で、生産中止のためメーカーによる対応も不可。
交換には70〜80万円の費用が必要とされていました。
加えて、施設が離島にあり管理が困難で、しかも事前の資料には「車で行ける」と虚偽の記載があったと語られています。
④投資を始める前に考慮すべきポイント
この体験談から学べる最大の教訓は、「現地を必ず確認すること」です。
書類上では良好に見えた案件が、現場では地盤の緩さ・参拝放置・アクセス困難・機器トラブルと問題だらけだったことが、投資判断を誤らせました。
また、購入後の再販売にも苦労し、購入元の業者は買い取りを拒否。
最終的には別の買取業者に2,100万円で売却し、約300万円の損失を抱えて投資から撤退することになりました。
このように、太陽光発電投資には数字に表れないリスクが多数あります。
特に中古物件では、現地確認と信頼できる業者の選定、パワコンなど主要部材の状態チェックが不可欠です。
【体験談②】Yahoo!知恵袋での実際の質問と回答から見る投資の現実
インターネット上での体験談の中には、数字だけでなく長期的な運用実態を感じ取れる貴重な意見があります。
ここでは、Yahoo!知恵袋での質問に対する具体的な回答をもとに、太陽光発電投資の現実を3つの観点から解説します。
①投資額と回収期間の実例
回答者の方は、約12年前に2,000万円をかけて太陽光発電設備を導入されたとのこと。
制度としては全量買取(FIT)が適用されており、昨年すでに設置費用の回収を完了したと述べています。
つまり、約11年で初期投資を回収し、現在は純利益期間に突入。
残りの9年間で、毎月約20万円、年間で240万円の収入が見込めるという非常に安定したキャッシュフローが得られている状況です。
ランニングコストはほとんどかからず、たまにテスターで点検する程度とのことで、まさに資産として稼働している状態です。
②利回りの実態とその要因
一見すると、この投資は非常に優良な例に見えますが、回答者は「今はもう旨みが薄い」とも述べています。
その理由は、当時の売電単価と現在の単価の差にあります。
回答者が導入した時期の売電単価は1kWhあたり42円。
しかし現在では10円前後(1/4以下)にまで下がっており、同じ設備を今導入しても、月5万円程度の収入にしかならないという比較がされています。
つまり、過去の成功事例は制度のタイミングと単価条件によるものであり、今の条件下では同様の利回りは実現しにくいことがはっきりと示されています。
③投資判断に影響を与える要素
このQ&Aから得られる重要な示唆は、太陽光発電投資の成否は、時期・制度・単価・初期費用の4点が大きく影響するということです。
同じ設備でも、導入時の制度と売電価格が異なるだけで、得られる収益は数倍違ってきます。
回答者は、当時2,000万円かけた設備が今なら500万円で設置できると言いますが、それに伴って売電単価も大幅に下がっているため、低コストで導入できても、得られる利益も小さくなるという構造がはっきりと説明されています。
投資判断においては、過去の成功事例がそのまま再現できるとは限らないという前提を持つことが非常に重要です。
これから投資を検討する場合は、最新の制度や価格をもとに、現実的なシミュレーションを行うことが不可欠です。
この知恵袋のやり取りは、太陽光発電投資がかつて有利だったこと、そして今は慎重な判断が求められることの両方を教えてくれる貴重な事例です。
表面利回りだけにとらわれず、制度の背景や市場の変化も含めた総合的な視点で判断することが、太陽光投資における成功への第一歩だといえるでしょう。
体験談に共通する太陽光発電投資の成功ポイントと注意点
これまで紹介した2つの体験談には、結果として明暗が分かれたものの、共通して見えてくる重要な判断軸がいくつかあります。
成功事例から学べる点と、失敗を避けるために気をつけるべき点を、投資前の検討項目としてまとめました。
①物件選定時のチェックリスト
太陽光発電投資において、物件選定はすべての出発点です。
立地条件、地盤の安定性、日射量、接続容量、災害リスクなど、数字では見えにくい部分にこそ注意が必要です。
見た目の利回りや表面収益だけでなく、設備の状態や周辺環境、管理のしやすさまで確認することが求められます。
特に中古物件では、参照できる設計図やメンテナンス記録の有無が大きな判断材料になります。
現地を見ずに購入した結果、地盤や産廃処理で大きなトラブルに繋がった事例もあるため、事前確認を怠らないことが基本です。
②信頼できる業者の選び方
太陽光発電設備の購入では、販売業者や仲介業者の信頼性がそのまま投資結果に影響します。
過去の販売実績、保守サポートの有無、施工後の問い合わせ対応など、単なる価格比較だけでなく、長く付き合える事業者かどうかを見極めることが重要です。
誤った情報や現地と異なる説明をされたまま契約し、結果的に想定外のリスクを背負った例も見受けられます。
購入後の対応や保証体制が明確か、責任の所在がはっきりしているかなども含めて、総合的な判断が必要です。
③売電価格の推移
太陽光投資の収益構造は、売電単価によって大きく左右されます。
過去のFIT制度では1kWhあたり40円以上の単価で契約できたケースもありましたが、現在では10円前後まで下がっており、同じ設備であっても収益性は大きく異なります。
単価の変動は制度の変更によって決まるため、将来の見通しやリスクも含めて冷静に判断する必要があります。
高利回りが実現した成功事例も、当時の制度や市場環境に依存していることを理解し、現状に置き換えて過信しない姿勢が求められます。
④投資目的と家計・生活設計との整合性
太陽光発電は初期費用が比較的大きく、回収には10年程度の期間がかかることが一般的です。
そのため、投資を検討する際には、自分の生活や家計の状況、資金の使い道と無理がないかを事前に確認しておくことが重要です。
たとえば、安定した収入があるかどうか、借入を利用する場合は返済計画に無理がないか、設備の維持管理を長期間続けられる状況かなど、現実的な視点で判断する必要があります。
目的が節税であるのか、長期的な資産づくりなのかによって、適した設備規模や立地条件も異なります。
収支予測だけを見て判断してしまうと、思わぬ出費や手間が発生し、結果として後悔につながる可能性もあります。
生活全体とのバランスをとりながら、無理のない範囲で進めることが、安定した投資につながります。
【家族構成・運用別シミュレーション】自家消費と売電の最適バランスとは
太陽光発電を導入する際、どれだけ発電した電気を売るのか、どれだけ自分の家庭で使うのかというバランスは、経済的な効果に大きく影響します。
特に家族構成やライフスタイル、蓄電池の有無、また投資か自宅用かといった用途の違いによって、最適な運用方法は変わってきます。
ここでは、実際の発電シミュレーションデータをもとに、3つの典型的な活用スタイルに分けて考えてみます。
★南向きのシミュレーション結果
※前提条件
- 南向きで傾斜角度29度の屋根に設置
- 愛媛県松山市の1981年~2009年の平均日射量データを使用
- 長州産業の太陽光パネル16枚(5.44kW)を搭載
①4人家族のオール電化住宅の場合
今回のシミュレーションでは、愛媛県松山市において、南向き・傾斜29度の屋根に5.44kWのパネルを設置したケースで、年間の想定発電量は6,928kWhとされています。
これを12か月で割ると、月平均で約577kWhの発電が見込まれます。
たとえば4人家族のオール電化住宅では、月500〜600kWh程度の電力を使用する家庭も多く、発電量の多くを自家消費できる条件です。
仮に発電量のうち400kWhを自家消費し、残り177kWhを売電すると仮定した場合、次のような効果が見込まれます。
- 電気代削減:400kWh × 30円/kWh(購入電力単価)=12,000円
- 売電収入:177kWh × 15円/kWh(売電単価)=約2,655円
- 合計経済効果:約14,655円/月、年間で約17.6万円
このように、電力使用量の多い家庭では売電よりも自家消費の方が経済効果が高くなる傾向があり、昼間の在宅率が高い家庭では特に効果が出やすくなります。
②蓄電池併用時のメリット・シナリオ別比較(売電型 vs 自家消費型)
蓄電池を導入すれば、昼間に余った電力をためて夜間に使うことができるため、自家消費率をさらに高めることが可能です。
たとえば、発電した577kWhのうち、昼間に使いきれなかった100kWhを蓄電池に充電し、夜間に使うとします。
夜間の電気料金が25円/kWhとした場合、蓄電池でカバーできる電気代の削減効果は2,500円になります。
この場合、売電はほぼ行わずに全量自家消費に近い状態になりますが、経済効果は最大で月14,500〜16,000円、年間で約17〜19万円程度まで向上する可能性があります。
ただし、蓄電池の導入には100万円前後の初期コストがかかるため、導入後の回収には10年以上かかるケースもあります。
売電単価が高い場合は売電優先でも成り立ちますが、単価が低下した現在では自家消費型へのシフトが合理的な判断となる場合も多いです。
③自宅用 vs 投資用で異なる判断基準
同じ太陽光発電でも、自宅用として導入する場合と、投資用に設備を購入する場合とでは、考え方が異なります。
自宅用の場合は、日常生活における電気代の削減が主な目的になります。
そのため、昼夜の電力使用パターンや使用機器、自家消費率、将来の電力価格上昇リスクなどを含めた生活目線での設計が求められます。
蓄電池の導入によって、家計への貢献度を高めることも視野に入れるべきです。
一方、投資用として運用する場合には、発電量、売電単価、設備コスト、利回り、メンテナンス費用などの経済指標が主な判断基準となります。
今回のように、年間6,928kWhの発電量が見込める設備で、売電単価が15円/kWhの場合、単純計算で年間売電収入は約103,920円。
これに対して導入コストや維持費を差し引いた実質利回りで投資判断を行います。
目的が異なれば設計や運用の優先順位も変わってくるため、導入前に自分の目的を明確にしておくことが重要です。
体験談とシミュレーションを活用して、納得できる投資判断を
太陽光発電投資は、制度や売電価格、設備の状態によって成果が大きく変わる投資手法です。
今回ご紹介したような実際の体験談は、数字だけでは見えてこない運用の現実や注意点を知るうえで、大きな参考になります。
また、発電シミュレーションを活用することで、自分に合った設備や導入パターンが見えてきます。
家族構成や電気の使い方、目的(自宅利用か投資か)によって、発電した電気を「売る」か「使う」か、その最適なバランスも異なります。
初めての方や数字に不安のある方は、まずは無料の収支シミュレーションから始めるのがおすすめです。
発電量・売電収入・維持費などを具体的に試算することで、リスクとリターンのバランスを客観的に把握できます。
太陽光発電の導入や収支について相談したい方は、岡山電力へお気軽にご相談ください。
設備選定から制度対応、シミュレーションの作成まで、実情に即したサポートをご提供しています。
納得のいく投資判断は、情報収集と現実的な見通しから始まります。
体験談とデータの両方を参考にしながら、自分に合った太陽光活用の形を見つけていきましょう。