太陽光発電の固定価格買取制度(FIT)が終了すると、売電価格が大幅に下がり、これまでのような収益を得ることが難しくなります。
卒FITを迎えた家庭では、引き続き売電を継続するのか、それとも自家消費へと移行するのか、さまざまな選択を迫られています。
主要電力会社に売電を続ける場合、手続きは簡単ですが買取価格は低く、新電力会社を利用すればより高い価格で売電できる可能性があるものの、契約内容や企業の安定性を慎重に見極める必要があります。
一方で、自家消費にシフトすれば、電気料金の削減や停電時の備えになるメリットがあるため、蓄電池やエコキュート、電気自動車(EV)などの設備を活用する動きも広がっています。
この記事では、卒FIT後の売電と自家消費の選択肢を詳しく解説し、それぞれのメリットや注意点を比較しながら、家庭にとって最適なエネルギー活用方法を見つけるためのポイントを紹介します。
FIT終了後の対策について
FIT(固定価格買取制度)の終了により、太陽光発電の売電価格が大幅に下がる状況となっています。
ここでは、卒FIT後の対策について詳しく解説します。
対策①卒FIT後は自家消費をする
FIT終了後の最も大きな変化は、売電価格の低下です。
かつての買取価格は24円〜26円/kWhでしたが、現在では大幅に下がっており、売電による収入は大きく減少しています。
そのため、売電よりも「自家消費」を重視する家庭が増えています。
自家消費を選ぶ理由としては、以下の点が挙げられます。
- 電力会社からの買電を減らし、電気代を削減できる
- 電気料金の高騰リスクを回避できる
- 非常時の電源確保(停電時のバックアップ)として活用できる
電気代が高騰している現状では、「自宅で発電した電気をできるだけ自宅で使う」という考え方が広まっているため、蓄電池やエコキュートなどの設備を導入し、電力の自給自足を目指す動きが活発になっています。
対策②主電力会社への売電を継続する
FIT終了後の対策の一つとして、これまでの主要電力会社(東京電力、関西電力、九州電力など)に売電を継続する方法があります。
卒FIT後に自動的に移行するプランもありますが、そのメリットや注意点を理解した上で選択することが重要です。
主電力会社に売電を継続するメリット
卒FIT後も主要電力会社に売電を継続する最大のメリットは、手続きが簡単であることです。
具体的なメリットを見ていきましょう。
1. 手続き不要で自動的に契約が継続
卒FIT後、特に何もしなければ、現在契約している主要電力会社の買取プランに自動的に移行されます。
そのため、新たに契約手続きをする必要がなく、手間がかかりません。
2. 大手企業の安定性
主要電力会社は倒産のリスクが低いため、契約先としての信頼性が高いというメリットがあります。
新電力会社の場合、経営状況によっては撤退や倒産する可能性がありますが、主要電力会社ならその心配は少ないです。
3. 余剰電力の買取価格が比較的安定している
主要電力会社の買取価格は市場価格に左右されにくいため、急激な価格変動のリスクが少ない という点も、メリットの1つです。
主電力会社売電の注意点と対処
主要電力会社に売電を継続することにはメリットもありますが、注意すべき点もあります。
1. 買取価格が低い
主要電力会社の買取単価は、一般的に7円〜9円/kWh と低く設定されています。
これは、FIT制度中の買取価格(24円〜26円/kWh)と比べると大幅な低下です。
そのため、売電収入をあてにしている場合は、注意が必要です。
2. 買取プランが変更される可能性
主要電力会社は、今後の市場状況に応じて買取プランを変更する可能性があります。
特に、電力市場の動向によって買取価格がさらに下がるリスクがあります。
3. 買取契約の変更や解約が手間になる
一度主要電力会社の売電プランに移行すると、他の新電力会社へ変更するときに契約手続きが必要になることがあります。
契約期間中に乗り換えができるかどうかも確認しておきましょう。
対策①新電力会社への売電を継続する
主要電力会社への売電以外の選択肢として、新電力会社に売電する方法があります。
近年、電力自由化により、多くの新電力会社が余剰電力の買取サービスを提供するようになりました。
主要電力会社よりも高い買取単価を提示するケースが多いため、売電による収入を少しでも維持したい場合に検討する価値があります。
新電力会社による余剰電力買い取りの現状
新電力会社とは、電力自由化に伴い、地域の主要電力会社以外で電力供給や買取をおこなう企業のことを指します。
例として、以下のような新電力会社があります。
- 自然電力
- Looopでんき
- みんな電力
- ENEOSでんき
新電力会社に売電するメリット
1. 主要電力会社より高い買取単価
新電力会社の多くは、主要電力会社よりも高い買取価格を設定しています。
例えば、主要電力会社の買取価格が7円〜9円/kWh であるのに対し、新電力会社では10円〜12円/kWh で買い取るケースもあります。
2. 多様な売電プラン
新電力会社は独自の買取プランを用意していることが多く、例えば以下のような選択肢があります。
- 時間帯別の買取価格
- セット割引
- 地域密着型の買取サービス
3. 環境貢献の選択肢
新電力会社のなかには、「再生可能エネルギー100%の電力を供給する」といった環境志向の高い企業もあります。
そのため、「環境負荷の低いエネルギーを支援したい」という考えの人にとっても、新電力会社は魅力的な選択肢になります。
新電力会社に売電するときの注意点
1. 会社の経営安定性を確認する
新電力会社は、主要電力会社と比べて規模が小さいため、経営が不安定な場合があります。
近年では、エネルギー価格の高騰により、多くの新電力会社が撤退や倒産を余儀なくされました。
2022年には、100社以上の新電力会社が市場から撤退しました。
2. 契約条件や買取単価の変動
新電力会社によっては、契約時の買取価格が一定期間後に変更される場合があります。
また、電力市場の影響を受けて、買取価格が予告なく下がる可能性もあります。
3. 地域によって対応していない場合がある
新電力会社の買取プランは全国展開されているわけではなく、一部の地域では利用できないこともあります。
新電力会社への売電で失敗しないためのポイント
新電力会社への売電は、主要電力会社よりも高い買取価格を得られる可能性がある一方で、慎重な選択が求められます。
まず、新電力会社を選ぶ際には、買取単価だけでなく、その価格がどの程度の期間保証されているのかを確認することが重要です。
短期間で価格が変動する契約では、予想以上に収益が下がるリスクがあります。
また、新電力会社の経営安定性も考慮すべきポイントです。
近年では電力市場の変動によって経営難に陥り、買取サービスを停止する企業も増えています。
そのため、過去の実績や口コミを調べ、安定した経営を続けている企業を選ぶことが大切です。
さらに、契約期間や解約条件も確認しておくべきです。契約期間の縛りがあると、より良い条件の電力会社が見つかってもすぐに乗り換えられない可能性があります。
解約時に違約金が発生するケースもあるため、契約内容を十分に理解してから判断する必要があります。
対策②完全自家消費する
卒FIT後のもう一つの選択肢として、発電した電気をすべて自家消費する方法があります。
売電価格が下がる一方で、電気料金は年々上昇しており、売電するよりも発電した電気を自宅で消費した方が経済的に有利なケースが増えています。
特に、蓄電池を導入することで、夜間や停電時にも電力を活用できるため、自家消費率を最大化することが可能になります。
余剰電力を蓄電する
卒FIT後に自家消費を考えるとき、蓄電池の導入が重要なポイントとなります。
太陽光発電は日中に発電するため、夜間や早朝など発電しない時間帯の電力供給には対応できません。
しかし、蓄電池を導入すれば、昼間に発電した電気を貯めておき、必要な時間帯に使用することが可能になります。
近年では、補助金制度を活用できる自治体も増えており、比較的低コストで蓄電池を導入できる環境が整いつつあります。
導入のときは、補助金情報などをチェックすることがおすすめです。
蓄電池を導入するときの注意点
蓄電池を導入することで自家消費率を高めることができますが、導入時にはいくつかの注意点があります。
1. 初期コストが高い
蓄電池の導入には、100万円〜200万円程度 の費用がかかる場合が多く、FIT終了後の家庭にとっては大きな負担となる可能性があります。
ただし、補助金制度を活用することで、実質的な負担を軽減できることもあります。
2. 太陽光発電システムとの互換性を確認
蓄電池には、太陽光発電システムとの相性があるため、現在の設備に対応しているか事前に確認する必要があります。
特に、パワーコンディショナーとの互換性が重要なポイントとなります。
3. 蓄電容量の選択
蓄電池の容量は 5kWh〜15kWh程度のものが主流ですが、家庭の電力消費量に応じた適切な容量を選ぶことが大切です。
容量が大きすぎると無駄になり、小さすぎると電力を十分に貯められないため、専門業者と相談しながら決めるのがベストです。
FIT終了後のよくある質問Q&A
ここでは、FIT終了後に関するよくある質問に回答していきます。
それぞれ、確認していきましょう。
質問①売電から自家消費への変更は後から可能ですか?
卒FIT後に一度売電を選択しても、後から自家消費へ移行することは可能です。
ただし、いくつかのポイントに注意する必要があります。
① 売電契約の解約が必要
主要電力会社や新電力会社と売電契約を結んでいる場合、自家消費へ移行するには契約の解約手続きが必要になります。
解約時には違約金などが発生しないか、契約内容を確認しておきましょう。
② 蓄電池やEVの導入を検討
売電を停止して完全自家消費に移行する場合、蓄電池や電気自動車(EV)などの設備を活用することで、発電した電気を無駄なく利用できます。
特に、夜間の電力消費をカバーするためには、適切な容量の蓄電池が必要です。
質問②卒FIT後の売電価格は今後も下がりますか?
現在、FIT終了後の売電価格は主要電力会社で7円〜9円/kWh程度、新電力会社でも10円〜12円/kWh程度となっています。
しかし、今後も売電価格が下がる可能性があるため、長期的な計画を立てることが重要です。
① 売電価格が下がる理由
- 再生可能エネルギーの普及が進み、供給量が増加している
- 電力市場の価格変動により、買取価格が引き下げられる可能性がある
- 国のエネルギー政策によって、新しい制度が導入される可能性がある
② 売電よりも自家消費が有利になるケース
現在の売電価格は低下傾向にありますが、電力会社からの買電価格(電気料金)は上昇傾向にあります。
このため、発電した電気を売るよりも、自宅で使ったほうが経済的にメリットが大きいケースが増えています。
特に、今後の電気料金の高騰を考慮すると、自家消費を優先する戦略が有効になるでしょう。
質問③卒FITした太陽光設備の寿命やメンテナンスはどうするの?
太陽光発電システムは、一般的に20年〜30年程度の寿命があると言われています。
しかし、適切なメンテナンスをおこなうことで、より長く効率的に運用することが可能です。
① 太陽光パネルの寿命
太陽光パネル自体は25年〜30年の寿命があるとされており、劣化は緩やかに進みます。
ただし、長期間使用すると発電効率が徐々に低下するため、定期的な点検が推奨されます。
② パワーコンディショナーの交換
パワーコンディショナー(パワコン)は、太陽光発電システムの中で最も寿命が短い部品の1つです。
一般的に10年〜15年程度で交換が必要になるため、卒FITを迎える頃には寿命が近づいている可能性があります。
パワコンの故障は発電効率に大きく影響を与えるため、早めの交換を検討することが重要です。
③ メンテナンスの重要性
太陽光発電システムのメンテナンスを怠ると、発電効率の低下やシステムの故障につながる可能性があります。
- パネルの汚れや破損の確認(汚れが付着すると発電効率が低下)
- パワーコンディショナーの動作チェック(異音や警告表示が出ていないか確認)
- 配線や接続部分の点検(劣化や断線がないか確認)
④ メンテナンス費用と補助金
太陽光発電システムのメンテナンスには費用がかかる場合がありますが、自治体によっては補助金が出るケースもあります。
また、一部のメーカーでは長期保証プランを提供していることもあるため、契約内容を確認しておくと良いでしょう。
まとめ
卒FITを迎えると、これまでのように高い価格で電気を売ることができなくなるため、今後の電力運用をどのようにするか慎重に検討する必要があります。
主要電力会社への売電は、手続きが簡単で安定していますが、買取価格は低めであり、収益性はあまり期待できません。
また、新電力会社は主要電力会社よりも高い買取価格を提示することが多いものの、契約内容や企業の経営安定性を慎重に確認する必要があります。
完全自家消費への移行は、電気料金の削減や停電対策に有効ですが、蓄電池などの初期投資が必要になります。
売電価格は今後も低下し、電気料金は上昇すると予測されるため、売電を続けるよりも自家消費の割合を増やした方が経済的なメリットが大きいでしょう。
蓄電池やエコキュート、電気自動車などを活用すれば、自家消費をより効率的におこなうことが可能です。
また、太陽光発電システムを長期間運用するためには、パワーコンディショナーの交換や定期的なメンテナンスが欠かせません。
卒FIT後の電力運用は、家庭のライフスタイルや設備状況に合わせて最適な方法を選ぶようにしましょう。