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太陽光設備の売却から買い替え・再投資までの流れと注意点 高く売却するための準備と次の選択肢

公開日:
2025.05.23

固定価格買取制度(FIT)の終了が見え始めた今、かつて高利回りで運用されていた太陽光発電所を「売却したい」と考えるオーナーが増えています。

FIT期間が満了すれば、売電単価は大きく下がり、収益性も一気に縮小します。

加えて、設備の経年劣化やO&M(運用・保守)の負担増など、運用を続けるメリットよりも、今のうちに売却して現金化する選択肢が現実味を帯びてきています。

一方で、その売却によって得た資金を活用し、新しい設備への買い替えや、再投資を選ぶ投資家も増えてきました。

土地付き低圧から高圧案件への切り替えや、PPAモデルへの移行、再生可能エネルギー分野での次なる事業展開など、売却は撤退ではなく、次の一手として位置づけられています。

ここでは、こうした太陽光設備の売却から再投資までの一連の流れを整理しながら、高く売却するための準備ポイントや、次に選ばれている設備・事業モデルについて、実務的な視点で詳しく解説していきます。

太陽光設備を売却するための基本ステップ

太陽光発電所の売却は、単なる資産処分ではなく、次の投資や事業展開のための戦略的な一手にもなり得ます。

特にFIT期間の満了が近づく中で、最適なタイミングと手続きを踏まえて進めることが、売却価格にも大きく影響します。

ここでは、実際に売却を進めるための基本的なステップを4つの視点から解説します。

ステップ①売却の判断基準と目的の明確化

まず最初に行うべきなのは、「なぜ売却するのか」を明確にすることです。

FIT期間の満了や、収益性の低下により保有メリットが薄れてきた場合、資産としての価値があるうちに売却しておく判断は合理的です。

また、売却益を次の設備や新たな再エネプロジェクトに再投資する目的での売却も増えています。

目的を明確にすることで、売却価格の基準や売却後の資金活用方法が整理しやすくなります。

ステップ②設備情報と条件の整理

売却をスムーズに進めるには、買い手が安心して判断できるように、あらかじめ設備に関する情報を整理しておくことが大切です。

具体的には、売電単価、残存FIT期間、年間の売電実績、直近の収支、保守履歴、設置場所の権利関係(土地所有・賃貸)などが重要な判断材料になります。

これらの情報が整理されていないと、査定額が下がったり、売却交渉が難航する可能性があります。

ステップ③査定の依頼と買取・仲介業者の選定

情報整理ができたら、次は複数の業者へ査定を依頼しましょう。

近年は、太陽光設備専門の買取業者や、個人投資家とのマッチングを行う仲介会社も増えています。

業者によって査定基準や得意とするエリア・設備規模が異なるため、比較検討が重要です。

また、単に価格だけでなく、手続きのスピードや支払条件、登記や名義変更のサポート体制なども含めて選ぶと、トラブルのない取引につながります。

ステップ④契約・名義変更・登記手続きと入金までの流れ

買い手が決まれば、売買契約を締結し、必要な手続きを進めていきます。

発電設備の名義変更や、土地が賃貸の場合は地上権・使用契約の承継、場合によっては金融機関の担保抹消なども必要です。

また、電力会社への契約変更届や、経済産業省への事業計画変更届出も忘れてはいけません。

これらがすべて完了した段階で、買主から売却代金が入金され、取引が完了します。

専門知識が必要な場面も多いため、不安な場合は経験豊富な業者や行政書士と連携するのが安心です。

太陽光設備の売却価格に影響する評価ポイント

太陽光発電設備の売却価格は、一律で決まるものではなく、発電実績や設備の状態、契約条件、将来の収益見通しなど、多角的な視点から評価されます。

とくにJPEA(一般社団法人太陽光発電協会)が公開している『太陽光発電事業の評価ガイド』では、事業評価の考え方が整理されており、売却を検討する際の参考資料として非常に有用です。

以下に、売却価格に影響を与える主な評価ポイントを紹介します。

ポイント①年間売電収入とFIT単価の残期間

売却価格の大きな評価基準となるのが、「年間の売電収入」と「FIT単価の残存期間」です。

FIT制度による固定価格買取は、契約から20年間の安定収入が見込めるため、その残期間が長いほど、買い手にとっての収益期待は高くなります。

『太陽光発電事業の評価ガイド』でも、将来キャッシュフローの現在価値をもとに事業価値を算定する手法が推奨されており、残期間の長さはそのまま評価額に直結します。

たとえば残り15年と残り3年では、同じ出力でも評価価格が大きく異なるのはこのためです。

ポイント②設備の稼働状況とメンテナンス履歴

安定した発電実績と、計画的なメンテナンス履歴が残されていることは、設備の信頼性を示す重要な要素です。

これまでに故障が少なく、モジュールやPCSの稼働停止がほとんどなければ、買い手は安心して投資判断を下しやすくなります。

『太陽光発電事業の評価ガイド』でも、O&M(運用・保守)の実施状況は定量的にチェックすべき項目とされており、稼働データの整備やメンテナンス記録の保管が価格に反映される可能性があります。

特に法人向けの譲渡では、稼働実績をグラフ等で可視化できると好印象です。

ポイント③パネル・パワーコンディショナーの劣化や更新履歴

太陽光パネルやパワーコンディショナーの状態も、設備評価において重要です。

一般的にパネルは25年以上の耐用年数がありますが、経年劣化によって出力は少しずつ低下します。

とくに設置後10年以上経過している場合は、モジュールの発電性能やパワーコンディショナーの交換履歴が問われることになります。

『太陽光発電事業の評価ガイド』では、設備の経年劣化に伴うパフォーマンスリスクも、評価に織り込むべきとされています。

逆に言えば、適切なタイミングでパワーコンディショナー交換を済ませていたり、保証や定期点検の証拠が揃っている場合には、減価要素を抑えることができます。

ポイント④土地付き案件かどうか

設備が「土地付きかどうか」は、買い手にとって非常に大きな判断材料です。

土地を所有している場合は、譲渡後の運用がシンプルで、評価額が高くなる傾向があります。

一方、賃貸の場合は、契約期間や賃料条件、地上権の有無などの法的整理が必要となり、ややリスクを伴います。

『太陽光発電事業の評価ガイド』でも、土地利用の法的整理状況が明確であるかどうかが、事業価値に与える影響は大きいとされています。

契約書類や権利関係の説明資料を揃えておくことで、スムーズな査定と高評価につながります。

ポイント⑤利回りとリスク評価による価格変動

最終的に買い手が重視するのは、購入後に得られる投資回収の見込み、いわゆる利回りです。

年間の純利益を投資額で割った数値(実質利回り)が高いほど、買い手の関心は高まり、競争によって価格が上昇することもあります。

ただし、利回りが高く見えても、過去に設備トラブルが多かったり、売電単価の残り期間が短いなどのリスクがあれば、逆に評価が下がることもあります。

『太陽光発電事業の評価ガイド』でも、将来のキャッシュフローを適切に見積もるためには、リスクの定性・定量評価が重要とされています。

価格は単に設備規模で決まるものではなく、「どれだけ安定して収益が見込めるか」という事業価値の総合判断によって決まるのです。

太陽光設備の売却後の選択肢としての「買い替え」や「再投資」

太陽光設備を売却して得た資金は、単に手元資金にするだけでなく、次の投資機会に充てることでより効率的な資産運用へとつなげることができます。

とくにFITやFIP制度の変化に伴い、新しい案件への「買い替え」や「再投資」を選ぶ事業者や投資家が増えています。

以下ではその具体的な選択肢や注意点を紹介します。

①新しいFIT/FIP案件への再投資という選択肢

FIT(固定価格買取制度)終了間近の設備を手放し、残期間の長い新しい案件へ再投資するというのは、収益の安定化を図るうえで有効な戦略です。

特に2022年以降は、一定規模以上の案件にFIP(フィードイン・プレミアム)制度が導入され、発電事業の自由度が高まっています。

売却によって得た資金を活用し、新制度対応型の発電所へ投資することで、次の10年~20年にわたって安定的なキャッシュフローを確保することが可能です。

新築案件であれば、設備性能やメンテナンスコストの面でも優位性があります。

②高稼働地域や新制度対応型設備への買い替え事例

買い替えの実例として多いのが、発電効率の高いエリアや、災害リスクの少ない立地へ移行するケースです。

たとえば、日射量が安定している九州南部・中部地方の一部では、利回りの高い新設案件が多数登場しています。

また、系統制約への対応や蓄電池の併設によって、調整力のある発電所として売電単価に上乗せできるケースもあり、単なる「規模の置き換え」ではなく、制度を活かした買い替え戦略が注目されています。

すでにFITを経験した事業者にとっては、FIPやPPA型の設備に移行することで、より柔軟な運用と収益モデルが構築できます。

③売却益を次の発電所に充てる「資産の乗り換え」戦略

太陽光発電所の売却で得た資金を、次の設備に充てる「資産の乗り換え」は、不動産における物件の買い替えと同じように、長期運用のなかで効果的なポートフォリオ再構築の手段です。

たとえば、減価償却が進んだ旧設備を売却し、新たに取得する設備を再度償却対象とすることで、収益性だけでなく税務面でも有利な運用が可能になります。

発電所という収益資産を、常に収益性の高い状態に保つという視点での戦略的な資産運用が求められる時代になっています。

④税務・会計上の注意点と再投資時のメリット

売却に伴って発生する譲渡益は、法人・個人を問わず課税対象となるため、税務面の対応は慎重に進める必要があります。

特に法人では、固定資産売却益として利益計上されるため、タイミングによっては一時的に税負担が増す可能性があります。

一方で、その売却益を新たな設備投資に充てた場合、特別償却や中小企業経営強化税制などの減税措置を活用することも可能です。

買い替えを単なる再投資ではなく、「節税と成長戦略の両立」と捉えることで、財務全体に与える影響をコントロールすることができます。

税理士や専門アドバイザーとの連携が、こうした戦略を実行するうえで欠かせません。

太陽光設備売却は次の収益化への第一ステップ

太陽光発電所の売却は、単なる事業撤退ではなく、次の成長フェーズに向けた再構築の第一歩となり得ます。

FIT終了が近づき、設備の収益性が落ちてきたタイミングでの売却は、戦略的な資産の入れ替えとして注目されており、全国でその動きが広がっています。

売却で得た資金を活用し、FIP制度対応の新設案件や発電効率の高いエリア、蓄電池併設型の設備などへ「再投資」する事業者が増えており、太陽光発電を持続可能な事業として再設計する動きが加速しています。

もし売却後の再投資をお考えで、新たな発電設備の購入を検討されている場合は、岡山電力までご相談ください。

高稼働エリアの新規案件や最新制度対応設備など、事業性の高い物件をご紹介することが可能です。

現状の設備を見直し、次に向けた選択肢を検討することは、今後の事業計画を考えるうえでも有効な手段です。

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