「ダブル発電」とは、太陽光発電に蓄電池や他の発電システムを組み合わせ、売電量を増やしながら電気の自家消費を最適化する仕組みです。
夜間の発電量が多い時間帯に蓄電し、夜間に活用することで、電力を無駄なく使うことができます。
また、注目されている「V2H（Vehicle to Home）」システムを導入すると、電気自動車を蓄電池として活用できるため、より効率的な電力運用が可能になります。
この記事では、ダブル発電の基本的な仕組みや売電価格への影響、最適な蓄電池の選択、電気自動車との組み合わせによる運用方法について詳しく解説します。
電気料金を抑えながら売電収入を増やしたい方、FIT満了後のエネルギー活用を考えている方のために役立つ情報をお届けします！
蓄電池を使って売電する「ダブル発電」の仕組み
ダブル発電とは、太陽光発電に加えて蓄電池や他の発電システムを併用することで、売電量を増やす運用方法のことです。
ここでは、ダブル発電の基本的な内容について解説します。
それぞれ、確認していきましょう。
ダブル発電とは？ 基本的な仕組みと特徴
ダブル発電は、主に以下の２つの方法に分類されます。
| 太陽光発電＋蓄電池 | 太陽光発電システムと蓄電池を組み合わせ、発電した電力を一時的に蓄えて使用することで、売電量を増やす。これにより、家庭の電力消費を最適化しながら余剰電力を売電することができる。 |
| 太陽光発電＋別の発電システム（エネファーム等） | ガスを使って発電する「エネファーム」や、その他の再生可能エネルギーを利用する発電システムと組み合わせて、発電量を増やす方法。 |
ダブル発電の最大の特徴は、売電可能な電力量が増えることですが、蓄電池を導入すると売電価格が変動する可能性があるため、その仕組みを理解することが重要です。
蓄電した電力を自家消費して太陽光の余剰電力を増やす方法
ダブル発電をうまく活用するためには、「押し上げ効果」を意識した運用がポイントになります。
押し上げ効果とは、夜間の安い電力を蓄電池にするために、日中に使うことで、残り電力の割合を増やす方法です。
具体的な運用方法としては、以下のようなものがあります。
- 蓄電池を活用し、夜間は残電力を売電に使わない
- 夜間の安価な電力をため、夜間の消費電力を中心にする
このように、蓄電池を活用することで太陽光の残電力を最大限に活用し、発電性を向上させることが可能です。
蓄電池と太陽光発電の併用でも売電価格が下がらないケース 
ダブル発電は、売電価格が下がる場合があるとされていますが、実際の条件下では売電価格が下がらないケースもあります。
特に、10kW以上の太陽光発電システムを導入している場合やシングル発電用の蓄電池を使用する場合など、適切な特定運用をすれば売電を維持したまま、発電のメリットを受けられます。
10kW以上の認定なら売電は維持される
一般的に、10kW未満の太陽光発電システムでは、ダブル発電に該当すると売電価格が下がる可能性があります。
ただし、10kWの太陽光発電設備を設置している場合は、ダブル発電に該当しても売電時間が下がりません。
10kW以上の設備は「全量買取制度」が適用されるためです。
つまり、発電した電力のすべてを売電できるため、二重発電の影響を受けにくくなります。
【10kW以上の設備のメリット】
- FIT期間が10kW未満の設備（10年間）より長く、20年間の買取保証がある
- シングル発電・ダブル発電に関係なく売電価格が維持される
例えば、以下のような場合では、ダブル発電を導入しても電力価格が変わりません。
設備容量 売電方式 売電価格 10kW未満 ダブル発電 一部の年度で価格が下がる可能性あり 10kW未満 シングル発電 固定価格買取 10kW以上 ダブル発電 売電価格は下がらない 10kW以上 シングル発電 売電価格は下がらない
10kW以上の設備を導入している場合は、ダブル発電を意識する近隣蓄電池を併用できるのが大きなメリットです。
シングル発電用の蓄電池を併用する方法
ダブル発電を避けながら蓄電池を導入する方法として、「シングル発電用の蓄電池」を使用する方法があります。
ダブル発電と認定される主な理由は、蓄電池に聞こえる電力が売電時にも放電されることで「押し上げ効果」が発生し、売電量が増えることにあります。
しかし、シングル発電用の蓄電池は、売電の際に放電を停止する仕組みになっているため、太陽光発電による余暇電力のみを売電することになり、ダブル発電には該当しません。
最近では、シングル発電とダブル発電を切り替えられる「ハイブリッド型蓄電池」も登場しており、状況に応じて運用を調整できるようになりました。
電気自動車を使うとダブル発電になる ？
近年、電気自動車（EV）やプラグインハイブリッド車（PHEV）の普及が進んでいるなか、これらの車両を家庭用電源として活用する技術も注目されています。
その中でも「V2H（Vehicle to Home）システム」を導入すると、電気自動車を蓄電池として利用できるため、ダブル発電に該当するケースがあります。
詳しい内容について、確認していきましょう。
電気自動車を蓄電池として代用できるV2Hシステムとは
V2H（Vehicle to Home）とは、電気自動車のバッテリーを家庭用の蓄電池として利用し、電力を住宅へ供給するシステムのことです。
通常、電気自動車は充電することでエネルギーを蓄えますが、V2Hを導入することで、車に蓄えた電力を家庭内で使用することが可能になります。
V2Hを活用することで、夜間に太陽光発電の残り電力で車を充電し、夜間に家庭内へ供給することで電気代を削減できるという大きなメリットがあります。
また、緊急時に非常用電源としても利用できるため、災害対策としても有効なシステムです。
しかし、V2Hを導入することで「ダブル発電」に該当する場合があるため、売電への影響を事前に確認することが重要です。
V2Hシステム導入のメリットとデメリット
V2Hシステムを導入することで、電気自動車のバッテリーをより効率的に活用できるというメリットがあります。
V2H導入のメリット
- 電気自動車のバッテリーを家庭用電源として活用できる
- 夜間の電力を蓄え、電気料金の節約が可能
- 緊急時に非常に電源として利用できる
- 再生可能エネルギーを最大限活用し、環境負荷を削減できる
また、V2Hにはデメリットも存在します。
V2H導入のデメリット
- システム導入費用が高い
- 売電時にバッテリーから放電するとダブル発電と認定される
- FIT制度の適用によって売電価格が変動する可能性がある
特に、「通常のV2Hは売電時にバッテリーから放電するため、ダブル発電と見なされる可能性がある」という点に注意が必要です。
そのため、ダブル発電を回避したい場合は、「SMART V2H」と呼ばれるシステムを採用するのも考えておきましょう。
SMART V2Hでは、売電時バッテリーからの放電を停止する機能があり、太陽光発電の余剰電力のみを売電できるため、シングル発電の扱いとなります。
蓄電池を導入した「ダブル発電」でできること
ダブル発電を導入することで、売電のメリットを相談しながら、蓄電池の活用によってさらなる電力の効率化が可能になります。
ここでは、ダブル発電によって実現できる主なメリットを詳しく見ていきましょう。
①太陽光発電の余剰電力を最大限活用
通常、太陽光発電の余剰電力はそのまま売電されますが、蓄電池を導入することで売電するタイミングを調整できるようになります。
- 夜間の発電量が多い時間帯に蓄電池へ充電し、発電量が少ない夕方以降に電力を使うことで、家庭の電気代を削減できる。
- 売電価格が高い時間帯に余剰電力を売ることで、収益を最大化できる。
特に、卒FIT（固定価格買取期間終了後）の場合、売電価格が市場価格と連動することが多く、時間帯によって売電価格が変動します。
②電気料金の削減が可能
蓄電池を導入することで、家庭の電力消費を最適化し、電気料金を大幅に削減することが可能です。
特に、電力会社が提供する「時間帯別料金プラン」を活用することで、電気代を基本とする方法があります。
まず、夜間の安価な電力を蓄電池に蓄え、夜間の電力消費を主体として、電気料金の削減につながります。
例えば、以下のような使い方です。
- 昼間の電力消費を蓄電池の電力で補う→高い電気代を回避できる。
- 夜間の電気代が安い時間帯に蓄電する→コストの安い電力を利用できる。
電力の使い方を工夫することで、売電収益を上げるだけでなく、電気料金の節約にもつながるのがダブル発電の大きな魅力です。
③非常時の電力確保（停電対策）
災害時の緊急対策として、蓄電池の役割は、おても大きくなります。
特に、台風や地震などの影響で万一の際にも発生することが多々あるため、蓄電池を導入しておくと、万が一の際の電力を確保できるというメリットがあります。
蓄電池を活用すれば、緊急時にも冷蔵庫や照明、スマートフォンの充電など、最低限の電力を確保することが可能です。
さらに、V2H（Vehicle to Home）を導入すれば、電気自動車を非常に用途の電源として活用することも可能です。
まとめ
ダブル発電は、太陽光発電と蓄電池を組み合わせて売電量を増やし、電力の自家消費を最適化する仕組みです。
FIT制度の影響を受けるため、2019年度以降の認定では売電価格が維持されますが、2018年度以前の認定では売電価格が下がる可能性があるため、導入前に確認するようにしましょう。
また、蓄電池を活用すれば、余剰電力の活用や電気代の削減が可能であり、緊急時の非常用電源としても有効です。
さらに、V2Hシステムを導入すれば電気自動車を蓄電池代わりに利用できますが、売電時に放電を行うとダブル発電と認定されるため注意が必要です。
ダブル発電は、売電収益の最大化、電気代の節約、環境負荷の軽減、緊急対策など、多くのメリットを持ちます。
FIT制度や発電システムの選択を慎重に行い、自宅の電力運用に適した方法を検討しましょう。
