蓄電池の導入を検討する際、多くの人が「本当に電気代が安くなるのか?」と疑問を持ちます。
蓄電池は太陽光発電と組み合わせて昼間の余剰電力を貯めて活用したり、電気代が安い深夜の電力を貯めてピーク時に使用したりすることで節約効果を得られます。
しかし、導入には高額な初期費用がかかるため、しっかりと費用対効果を見極めることが重要です。
まず、蓄電池を導入する主な目的として、電気代の節約、停電時の備え、環境負荷の軽減、売電収入の最大化が挙げられます。
特に電気代削減を目的とする場合、電気の使い方や契約プランに応じたシミュレーションが欠かせません。
次に、費用対効果を正しく判断するためのポイントとして、初期費用、補助金の活用、電気代の削減額、寿命とメンテナンスコスト、売電単価の変動などを総合的に考える必要があります。
ここでは、電気代シミュレーションを基に、蓄電池の費用対効果と回収期間について詳しく解説します。
蓄電池の電気代節約効果のシミュレーション方法
蓄電池を導入することで、太陽光発電の電力を効率的に活用し、電気代を削減することが可能です。
しかし、どの程度の節約効果が得られるのかは、各家庭の電気使用量や運用方法によって異なります。
ここでは、電気使用量を基にした電気代削減シミュレーションや、蓄電池を活用したコスト削減効果について解説します。
①自宅の電気使用量を基にした電気代削減シミュレーション方法
蓄電池の節約効果をシミュレーションするためには、月間・年間の電気使用量(kWh)を把握することが重要です。
まず、電力会社の明細や電気料金アプリで、自宅の1か月あたりの電気使用量を確認しましょう。
※シミュレーション例(年間4,175kWhの電力消費をする家庭の場合)
一般家庭の年間電気使用量は、環境省の「令和3年度家庭部門のCO₂排出実態統計調査」によると、全国平均で1世帯あたり4,175kWhとされています。
ここでは、この数値をもとに電気代削減効果をシミュレーションします。
- 1か月の平均電気使用量:約348kWh
- 電気料金単価(平均):27円/kWh
- 年間電気代:348kWh × 12か月 × 27円 = 約11.3万円
太陽光発電を導入済みの家庭では、発電した電力を昼間に使い、余った分を売電しているケースが多いですが、蓄電池を導入することで「余剰電力を夜間に活用」し、購入する電力量を削減できます。
②昼間の発電を夜間に利用した場合のコスト削減額
太陽光発電の余剰電力を売電せずに蓄電池に貯め、夜間の電力として使用すると、電気代の削減効果が大きくなります。
※シミュレーション例(5kWhの蓄電池を導入した場合)
- 太陽光発電による余剰電力:1日あたり約5kWh
- 夜間の電力使用量(主にエアコン・冷蔵庫・照明など):約5kWh
- 蓄電池からの供給量:5kWh
- 削減できる電気代:5kWh × 27円 = 135円/日
- 年間の電気代削減額:135円 × 365日 = 約49,000円
このように、5kWhの蓄電池を利用することで、年間約5万円の電気代削減が可能になります。
大容量の蓄電池を導入すれば、さらに電気代削減効果が高まります。
③ピーク時の電力消費を抑えることでどれくらいの節約ができるのか
電気料金プランによっては、電力使用が集中する時間帯(ピーク時)の電力単価が高く設定されているため、蓄電池を活用してピーク時の電力消費を抑えることで、さらなる節約が可能です。
※シミュレーション例(電力プラン「時間帯別料金制」を利用している場合)
- ピーク時(昼12時~17時)の電気料金:35円/kWh
- オフピーク(深夜1時~6時)の電気料金:18円/kWh
- 蓄電池を活用し、ピーク時の電力消費を削減
1日あたりのピーク時電力使用量:3kWh
蓄電池で供給する場合の削減額:3kWh × (35円 – 18円) = 51円/日
年間節約額:51円 × 365日 = 約18,600円
このように、電気料金プランに合わせて蓄電池を運用することで、年間1万〜2万円の節約が可能になります。
電気代シミュレーションで見る蓄電池の費用対効果
蓄電池の導入には高額な初期費用がかかるため、電気代の節約効果や運用コストを考慮しながら、どれくらいの期間で投資を回収できるのかを正しく判断することが重要です。
ここでは、蓄電池の導入費用、維持コスト、補助金を活用した場合の費用について解説します。
①蓄電池の本体価格と設置費用の相場
蓄電池の価格は容量(kWh)やメーカー、機能によって異なりますが、一般的な相場は以下の通りです。
蓄電池の本体価格(相場)
容量 価格(目安) 5kWh 約80~120万円 7kWh 約100~140万円 10kWh 約140~180万円
設置費用は10万〜30万円程度かかる場合が多く、工事内容によって費用が変動します。
特に、太陽光発電と連携させる場合は、パワーコンディショナーの交換が必要になることもあります。
②メンテナンスや交換にかかるランニングコスト
蓄電池は一般的に10〜15年の寿命とされており、長期的に使用するにはメンテナンスや交換が必要です。
主なランニングコスト
項目 費用の目安 定期点検(5年ごと) 2~5万円 バッテリー交換(15年後) 50~100万円 パワーコンディショナー交換(15年後) 30~50万円
長期間の運用を考えると、15〜20年の間に交換コストが発生する可能性があるため、これも導入前に考慮する必要があります。
③補助金や助成金を活用した場合のコスト
蓄電池の導入には、国や自治体の補助金を活用することで、初期費用を大幅に削減できます。
蓄電池に関する国の補助金として、DR補助金が提供されています。
2024年DR補助金の申請期間は、2024年12月6日(金)で終了していますが、弊社では引き続きDR補助金の申請サポートを承っております。
2025年のDR補助金を効果的に活用するためには、今から準備を始めることが重要です。
また、地方自治体でも蓄電池導入支援の補助金を提供しており、国の補助金と併用できる場合が多く、支援額を増やせる可能性があります。
自治体ごとに内容や条件が異なるため、住んでいる地域の制度を確認してみてください。
一般家庭につけられる家庭用蓄電池は、5kW・8kWが多いです。
弊社で家庭用蓄電池の導入が多い地域の岡山県と香川県の補助金活用の事例も解説していきます。
岡山県の5kW場合
設置費用:5kWの蓄電システムの設置費用は約150万円です。
補助金:DR補助金では、蓄電システムに対して1kWあたり3万7,000円の補助金が支給されます。(上限額60万円)
西粟倉村の「低炭素なむらづくり推進施設設置補助金」により、本体価格の3分の1の補助金が受けられます。(上限12万円)
18万5,000円(DR補助金)+12万円(西粟倉村)=30万5,000円
自己負担額:150万円(設置費用) – 30万5,000円(補助金) = 119万5,000円
岡山県の8kW場合
設置費用:8kWの蓄電システムの設置費用は約210万円です。
補助金:DR補助金では、蓄電システムに対して1kWあたり3万7,000円の補助金が支給されます。(上限額60万円)
瀬戸内市の「瀬戸内市住宅用脱炭素推進設備導入補助金」により、設置費用の3分の1の補助金が受けられます。(上限額31万円)
29万6,000円(DR補助金)+31万円(瀬戸内市)=60万6,000円
自己負担額:210万円(設置費用) – 60万6,000円(補助金) = 149万4,000円
香川県の5kW場合
設置費用:5kWの蓄電システムの設置費用は約150万円です。
補助金:DR補助金では、蓄電システムに対して1kWあたり3万7,000円の補助金が支給されます。(上限額60万円)
香川県では、蓄電システムに対して補助対象経費の3分の1の補助金が支給されます。(上限額20万円)
琴平町の「琴平町住宅用太陽光発電システム等設置費補助」により、経費の3分の1の補助金が受けられます。(上限額10万円)
18万5,000円(DR補助金)+20万円(香川県)+10万円(宇多津町)=48万5,000円
自己負担額:150万円(設置費用) – 48万5,000円(補助金) = 101万5,000円
香川県の8kW場合
設置費用:8kWの蓄電システムの設置費用は約210万円です。
補助金:DR補助金では、蓄電システムに対して1kWあたり3万7,000円の補助金が支給されます。(上限額60万円)
香川県では、蓄電システムに対して補助対象経費の3分の1の補助金が支給されます。(上限額20万円)
まんのう町の「住宅用太陽光発電システム等設置費補助金」により、設備費の3分の1の補助金が受けられます。(上限額10万円)
29万6,000円(DR補助金)+20万円(香川県)+10万円(まんのう町)=59万6,000円
自己負担額:210万円(設置費用) – 59万6,000円(補助金) = 150万4,000円
※各補助金の申請には諸条件があります。詳細はお問い合わせください。
電気代シミュレーションで見る蓄電池の回収期間
蓄電池の導入を検討する際、多くの人が気になるのが「どれくらいの期間で投資を回収できるのか?」という点です。
蓄電池は高額な初期費用がかかるため、電気代削減効果や売電収入を考慮し、回収期間を正しく見積もることが重要です。
ここでは、蓄電池の回収期間の目安と、電気料金の値上がりによる影響について解説します。
①平均的な家庭での回収期間の目安
一般家庭の年間電気使用量は、環境省の「令和3年度家庭部門のCO₂排出実態統計調査」によると、全国平均で1世帯あたり4,175kWhとされています。
ここでは、この数値をもとに電気代削減効果をシミュレーションします。
※前提条件
- 蓄電池容量:7kWh
- 導入費用:補助金適用後 約100万円
- 年間電気代削減額
自家消費による電気代削減:年間約5.6万円
ピークシフトによる節約:年間約1.8万円
合計節約額:約7.4万円
回収期間の計算
導入費用(100万円) ÷ 年間削減額(7.4万円) = 約13.5年
蓄電池の寿命は一般的に15〜20年とされており、回収期間内に十分な電気代削減効果を得られる可能性があります。
②電気料金の値上がりが回収期間に与える影響
電気料金は年々上昇傾向にあり、将来的な値上がりが蓄電池の回収期間を短縮する要因となります。
電気料金が5%上昇した場合の影響
- 電気代削減額:年間約7.4万円 → 年間約7.8万円
- 回収期間:100万円 ÷ 7.8万円 = 約12.8年(約0.7年短縮)
電気料金が10%上昇した場合の影響
- 電気代削減額:年間約7.4万円 → 年間約8.1万円
- 回収期間:100万円 ÷ 8.1万円 = 約12.3年(約1.2年短縮)
電気料金が上昇するほど、蓄電池の運用メリットが増し、より早く投資回収が可能になります。
電気代節約に役立つ蓄電池シミュレーション3つのパターン
家庭の電力使用量やライフスタイルに合わせて最適な蓄電池を選ぶことで、電気代の節約効果を最大化できます。
ここでは、家庭の規模別に3つのパターンで蓄電池の活用シミュレーションを紹介します。
①2~3人家庭におすすめの蓄電池
少人数家庭では、電力消費量が比較的少ないため、小容量の蓄電池で十分な効果を得られる場合が多いです。
昼間の電力使用量が少ない2〜3人家庭では、4kWh〜7kWh程度の蓄電池が適していることが一般的です。
この容量であれば、夜間や曇りの日の電力をしっかりと補いつつ、初期費用を抑えることが可能です。
- 導入費用の目安:80万円〜120万円(補助金適用前)
- 補助金適用後の目安:約60万円〜90万円
- 電気代削減効果:月々5,000〜8,000円程度の削減が見込め、年間で約6〜10万円の節約効果が期待できます。
また、設置スペースをあまり必要としないコンパクトなモデルも多く、小さな住宅でも取り付けやすいのが特徴です。
シミュレーションを行う際には、昼間に太陽光発電でどれくらいの余剰電力が生じるのか、夜間に必要な電力量はどれくらいかを確認することがポイントです。
②4~6人以上の家庭におすすめの蓄電池
家族の人数が多い家庭では、電力消費量が多いため、中容量から大容量の蓄電池が適しています。
多数の家電が同時に使われることが多く、特に夕方から夜間のピーク時に電力需要が集中する傾向があります。
こうした電力使用をカバーするためには、10kWh〜14kWh程度の蓄電池がおすすめです。
10kWhの蓄電池であれば、一般的な家電の使用を数時間程度カバーできます。
一方、長時間の停電対策や電気自動車(EV)充電なども想定する場合、14kWh以上の大容量モデルが理想的です。
- 導入費用の目安:150万円〜250万円(補助金適用前)
- 補助金適用後の目安:約110万円〜180万円
- 電気代削減効果:月々8,000〜15,000円程度の削減が見込め、年間で約10〜18万円の節約が可能です。
シミュレーションでは、家庭の1日の電力消費量やピーク時の使用状況を分析し、蓄電池の容量が過不足なく選べるかを確認します。
初期費用が大きくなるため、補助金を活用したり、シミュレーションで無駄のない選択をすることが大切です。
③オール電化の家庭におすすめの蓄電池
オール電化家庭では、深夜や朝方など電力消費が多い時間帯を効率的にサポートできる蓄電池が求められます。
例えば、太陽光発電の余剰電力を昼間に蓄え、夜間の電力需要を賄うことができれば、電気代を大幅に抑えることが可能です。
また、蓄電池の出力性能も重要で、同時に複数の電力機器を動かせるモデルを選ぶことで、快適な生活を維持できます。
- 導入費用の目安:180万円〜300万円(補助金適用前)
- 補助金適用後の目安:約130万円〜220万円
- 電気代削減効果:月々10,000〜20,000円程度の削減が期待でき、年間で約12〜24万円の節約が可能です。
シミュレーションでは、特に夜間の電力使用量に焦点を当て、必要な容量や機能を分析することがポイントです。
また、電気代削減だけでなく、停電時の生活維持を考慮して、適切な出力性能を持つモデルを選ぶことが重要です。
電気代シミュレーションを活用して蓄電池選びを成功させよう
蓄電池の導入には高額な初期費用がかかるため、電気代削減効果や回収期間を正しくシミュレーションすることが重要です。
ここでは、家庭の規模別に適した蓄電池の選び方や費用対効果のシミュレーション、補助金活用のポイントについて解説しました。
電気料金の値上がりを考慮すると、蓄電池の回収期間は短縮され、長期的に見るとより大きな節約効果が期待できます。
岡山電力では、お客様の電気使用状況に合わせた最適な蓄電池プランをご提案し、設置からアフターサポートまで一貫して対応します。
また、電気代シミュレーションを基に最適な容量を提案し、補助金の活用で初期費用を抑えるアドバイスも行っています。
導入後の運用やメンテナンスのサポートも充実しているため、蓄電池の導入を検討されている方は、ぜひ岡山電力にご相談ください。